メイキング・オブ・首都高速

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首都高速シーナリーの建築現場へようこそ! ここでは道路工事現場の状況を簡単にご紹介します。

「シーナリーの現状と考え方」

マイクロソフト・フライトシミュレータには多くのシーナリーがありますが、それらは美しい反面、実際の位置からは滅茶苦茶ずれています。位置のずれ、方角のずれ、大きさの相違、埋立地の島の数・・・など、きりがありません。しかも特に東京のシーナリーの場合、もともとレインボーブリッジや東京タワーをはじめ、目印となる建造物が多い上、これらがまたものすごくずれまくっています。従って、本シーナリー(MS版)では地図を参考にして北緯何度・東経何度と位置指定することは完全にあきらめました。エンターテインメントなのですから、そこそこ本物らしく見えて、しかも美しい。見ていて楽しいのが一番だと考えました。(こうしてMS版シーナリーを作りました。TW版・湾改版では当然状況は異なっています。)
更に、できるだけデータ量を減らすようにしました。あまり量が多いと表示が不能になりますし、しかも高速道路の場合本物が美しいかというとそうとも言えないところもあります。結局、基本ユニットは、上が灰色で周りが赤色の直方体としました。
それから、なぜ赤色かというはなしですが、大昔初めて首都高ができたばかりの頃は本当にみんな赤かったのです。さすがに最近はアイボリーとか薄い緑とかもっと優しい色が多いですが、シーナリーとしてはある程度統一していた方がいいと考えました。どうせ作るなら目立った方がいいということで、とりあえず昔ながらの赤にしました。

「道路工事はアートだ。」

というわけで、正確さは求めないことにしたので、絶対的位置は一切気にしません。まずはじめに、作ろうとしている地区の周りの景色を眺めます。埋め立て地の位置、公園の位置、建築物の位置を見ます。そして、このへんに道路があると一番それっぽく見える位置を独断で決定します。そしてそこに目印となる道路ユニットを置きます。

「道路工事は位置合わせにはじまり位置合わせに終わる。」

あとはその近辺にたくさん道路ユニットを置いてみて、角度・長さ・位置・高さの微調整をひたすら繰り返します。バージョン0.2までは、本当にひたすら耐えるのみでした。まずソースコード上で適当な位置に道路を置いてみて、シーナリー・メーカーでコンパイルして、フライトシミュレータを起動します。そして多分あと0.2度北だとか、あと多分20m長くとか、100%勘の世界で調整していくのでした。これは非常に能率が悪く、疲労が溜まるとだんだんいやになって基本ユニット数が減り、特に曲線部分の品質が低下してしまいます。
そこでバージョン0.3の工事の際に、道路ユニットの品質向上を行うのとともに、デバッグ用コードを新規に作りました。
これがデバッグ用コードをインプリメントした状態の基本道路ユニットです。右にあるオレンジ色の5個の点は基本位置を示します。真ん中の点が現在位置・周りの4個の点が現在位置から経緯度で0.1度東西南北に移動した場合の位置を示しています。そしてその左にある緑の点々と赤の点々は、道路番号です。点の個数が各桁の数字を表し(但し0は10個です。)、赤色は小数点以下を示しています。従ってこの道路の番号は、「174.3」であることがわかります。基本道路ユニットの左側を見てください。道路の角に沿って縦に4つのオレンジ色の点が並んでいます。これは、左右に1度角度をずらした場合には道路の角はここになるという目印です。さらに、道路の角から左方向に、各々10個のオレンジ色の点が直線状に2列並んでいます。これは、長さ方向に延ばしたらこうなるということを示す点で、1個の点が1mの距離を示しています。つまり、道路の長さを10m延長すれば、道路の角は一番左の点にきます。
このデバッグ・コード付きの基本道路ユニットのおかげで、勘の世界から脱し、あと何m延長すべきだというような定量的評価がようやく可能になりました。バージョン0.3では道路以外にこのような道具作りに時間がかかってしまいましたが、長い目で見れば今後の作業効率の向上が期待されます。ちなみに、このデバッグ・コード付き道路は、ちょうど工事中の足場のようにも見えて、なかなか趣があります。
これが実際に工事に使用している足場のようすです。これはバージョン 0.4 で完成致しました、都心環状線と羽田線をつなぐ浜崎橋JCTの工事中の風景です。(最近はさすがに一部計算で位置決定をしています。)




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「トワイライト東京シーナリーについて」

TW版の首都高を作成するにあたって、トワイライトの東京シーナリーの各部分について必然的に詳しく観察することになりました。これはフォト・リアリスティック・シーナリーですが、決して「リアル」ではありません。マイクロソフト純正シーナリー程ではありませんが、やはり位置が結構ずれています。想像するに、おそらく周辺部分の関東地方の風景はランドサットなどの人工衛星データを、東京23区部分の風景は航空写真を使用されたのではないかと思います。航空写真では撮影高度がさほど高くないので当然周辺部では像に歪みが発生し、隣の領域との接合個所にずれが生じてきます。それを直すのはそう簡単ではないようで、一部では意図的に海岸線だけはうまく合わせたような個所がいろいろ見られます。
これは、レインボーブリッジの西側のテクスチャーです。2つの赤い矢印は、テクスチャーの境界です。すぐにわかるとおり、境界の上下では海の色が全く異なっており、さらに海岸線も完全に不連続になっています。(レインボーブリッジ自体は3Dオブジェクトなのでテクスチャーの継ぎ目の影響はありません。)2つのオレンジ色の矢印は、首都高速羽田線です。このように完全に左右に切れています。緑色の矢印は、東京モノレールの軌道です。トワイライトのシーナリーでの首都高(夜のライトのみ作成してあります。)では、このモノレールの軌道を首都高とみなすことによって、強引に上下の道路をつなげています。確かにモノレールの軌道を知らない人をだますには良い手法ですが、ちょっと折れ線の首都高になってしまいます。

これは東京駅の南側のテクスチャーです。4つの赤い矢印がテクスチャーの境界線ですので、ここでは4つのテクスチャーのタイルがあることがわかります。一番左端の緑のところは皇居の東端で、その右には丸の内のビル、その右の茶色の線は山手線・京浜東北線・東海道線・東海道新幹線の線路です。上の端のそばにある赤い細長い建物が東京駅です。確かに苦労されて線路はぴったりと合わさっていることがわかりますが、あまり目立たない右の方の銀座のビルの辺は目茶目茶です。2つのオレンジ色の矢印は、よく見ると全く同一の地点であることがわかります。ここから左の方に伸びる道路の形状も全く同じです。そして問題なのは緑色の矢印です。これは首都高ですが、左側の矢印は西銀座JCT・右側の矢印は京橋JCTです。西銀座JCTと東京駅の南端が同じ緯度に見えますが、実際はそうではなく、これらのJCTは有楽町駅北端と大体同じ緯度です。地図上で計測したところ、このずれは約400mでした。さらにこの写真だけでは良くわかりませんが、周辺の様子を見ればわかる通り、有楽町駅がないのです。ちょうどテクスチャーの継ぎ目に引っかかって消されてしまったようです。

次は、港区元麻布付近です。赤い矢印は同様にテクスチャーの境界です。空色の線は首都高速2号目黒線で、見事に切れています。そして緑の点々は、有栖川公園ですが、有栖川公園の南側のほとんどと、地下鉄日比谷線の広尾駅周辺・ドイツ大使館・フランス大使館・四の橋あたりがことごとく消えています。有栖川公園を消すとは個人的には大変不満です。なお、黄色のところは左は広尾病院・その隣が慶応義塾幼稚舎・右はオーストラリア大使館ですが、知っているひとが見れば一目瞭然な通り、実際は同じ緯度のわけはありません。

今度は逆に同じ物体が重複している例です。これはちょっと離れまして東名高速道路の東京料金所付近です。赤丸が東京料金所です。緑のところは全く同じ風景で重複しています。場所は、川崎市宮前区の等覚院です。黄色の点々は、トワイライトさんのところで強引に線を書いて道路を作った個所です。このように高速道路なのにヘアピンカーブができてしまいます。(まあいつも渋滞している東名なので、たとえ本物がそうなっていても事故にはならないかもしれませんが??)

首都高の工事の際にはこれらのずれをうまく乗り越えて道路を引く必要があるわけで、このように、フォト・リアリスティック・シーナリーといえども、「道路工事はアート」であることに変わりはありません。


上の2枚の写真は渋谷駅を中心にした場所です。左の絵は渋谷駅の西側、右の絵は東側です。細かくて見にくいですが、要するに、緑色の線が首都高3号線が通る道路なのですが、これがブツブツ切られていることがわかります。(紫色の線は東急東横線です。これはなんとか切れずに大丈夫です。)左の絵では渋谷駅と大橋付近で、右の絵では渋谷駅・高樹町でそれぞれ道路が切られています。さすがにこれは見かねて修正をかけました。

この図が修正後のものです。六本木から渋谷までの六本木通りと、それより西の246とが連続するように直しました。このように、理想的には気づいたところは全部直せば良いのですが、きりがないので他のところはあまりやっていません。(環7と246の交差点のそばの246などもそうです。)




「長野オリンピック・シーナリーの周辺」

長野オリンピックの白馬のジャンプ台を作るに当たっては、オブジェクト数の限界はFS98よりもFS95の方が良かったのですが、周辺のシーナリーについてもFS98の Asia よりも MS-JAPAN の方が良いです。
左の絵は MS-JAPAN を使用した場合、右の絵は FS98 に付属の Asia のシーナリーを使用した場合です。各々、真ん中より少し上の点は、私の作った白馬ジャンプ台、下の大きな湖は、マイクロソフトのシーナリーの青木湖、中央の縦線は同じくマイクロソフトのシーナリーの国道148号です。一目瞭然のとおり、国道148号が FS98 のシーナリーでは青木湖の東を通らず、北から西へ突然カーブしてトンネル(または行き止まり?)になっています。このように、FS98 と MS-JAPAN は細かいところで少しづつ異なっており、完全に同じではありません。


「メイキング・オブ・横浜シーナリー」

イラストレイテッド・シーナリーという新しいジャンルのシーナリーを創作し、横浜のシーナリーを作る事にしました。そもそも、横浜シーナリーを作ろうとした動機は、首都高にあります。首都高もおかげさまで少しづつですが工事が進捗し、ゆくゆくは神奈川県に入る可能性も出てきました。ところで、MS版とTW版を比べると、リアリティの点からTW版がやはり優れています。そこで最近の首都高の工事はまずTW版を作ってからそれをMS版におとす方法で行っています。そうするとまずはTW版の首都高が神奈川県に入る運命となりますが、ここでTWの東京シーナリーを見ると、航空写真がなくなって衛星写真のみの地域は解像度が悪く、あんなお化け屋敷のようなテクスチャのところに道路を置くのは忍びないものです。しかも東名高速とか新幹線は、強引になぞってあるため幅が100m位に広くなっているし、そんなところに道路を置くのはいやなものです。
そこで、それなら仕方ないから作ろうか・・・ということになったのですが、・・・衛星写真はともかく、航空写真はそう簡単に安価で手に入りません。有料で大量に販売できるあてがあるならともかく、個人が単にシーナリーのために出せる金額では到底ありません。しかも当然著作権の問題も絡んでくるでしょうし、たとえそれが無いにしても、航空写真を貼ることのみで逆に「シーナリーはアートだ!」と道路工事のように主張するのもちょっと無理があるかもしれません。まあ、カネが無くともコネがあればなんとかなりそうですが、しっかりと、両方ないです。・・・・・

となると、自動的に、全部自分で作ることになりました。そして、地図上の座標を元に、全部絵を描く事にしました。「地図」という著作物を使うのではなく「座標」という事実のみを使うので、著作権の問題もありません。逆に絵を描くのであきらかに「ヨコハマシーナリーもアート!」であることに疑いはありません。

というわけで、地図を元に絵を描けば、座標誤差がゼロの完璧なシーナリが完成するはずだったのですが、そう簡単にはいきませんでした。
ここで、横浜シーナリー作成のポリシーを考えたのですが、やはり現在東京近郊のシーナリーで最も完成度が高く、かつ最も普及しているものは、トワイライトさんの東京シーナリーだと思います。となると、トワイライト東京シーナリーとの互換性を維持するのは大前提としたいと考えました。そこで問題です。上にも書いた通り、トワイライト東京シーナリーは、かなり座標がずれています。東京23区内だけずれていれば横浜は関係ないのですが、いろいろ見てみると、厚木基地や調布飛行場の位置もずれまくっています。
これは結構困ります。具体的に書くと、横浜中心部近辺は座標のずれはないのですが、厚木基地は北東方向に約2kmずれている上、大きさも南北方向に2倍弱大きくなっています。調布飛行場は、今度は北西方向に約3kmずれています。トワイライト東京シーナリーのように、途中テクスチャを省略したり逆に重複させたりして目立たないようにごまかすのが一番簡単ですが、そもそも横浜シーナリーを作ろうと思った動機が「道路工事」ですから、これをやると途中の道路の連続性が失われ、何のために作ったのかがわからなくなってしまいます。
そこで仕方なく、とても面倒ですが、トワイライトの厚木・調布にあわせてシーナリーのブロックを少しづつ歪ませてずらすことにしました。
これをご覧ください。これがずらしの現状です。緑色の領域は、位置のずれがない横浜中心部です。赤は、厚木基地です。北東にずれている上、南北に伸びています。その中間の領域は、少しづつ正方形から歪んだ形になっています。これを調布についても行うため、上の方では少しづつ左へ歪んでいます。これをやると大変手間がかかりますが、道路や線路の連続性が保たれ、かつトワイライト東京シーナリーとの互換性も保たれます。
これでやっと位置ずれと互換性の問題をクリアーできたので、具体的にどのくらいの解像度で作ろうかということになるのですが、当然粗く作ると見栄えが悪いし、細かく作ると重くなります。あと、あまり細かく作ると、それをサポートするだけの情報入手が困難です。たとえば、・・・さんの家の屋根の色とか、・・・さんの家の隣は、家は建っていなくて実は空き地だとか・・・個人のレベルで手におえる情報量をはるかに越えています。しかしせっかく作るのだから、トワイライトの東京シーナリーよりは高解像度で・・・というのが人情です。
というわけで、結局横浜シーナリーでは、1ピクセルが約6mの解像度としました。これは、トワイライト東京シーナリーの都心部の解像度よりも細かいが、個々の家々の情報まではわからない程度の解像度で、住宅地でも太目の道路・小さな児童遊園・小学校の建物と校庭などは判別できるといった、扱いやすくかつ興味もそそられる程度の解像度ではないかと考えています。
この図をご覧ください。上が東京シーナリーの航空写真領域での解像度(約6400フィートより上空)、左下が東京シーナリーの衛星写真領域での解像度、そして右下が横浜シーナリーの解像度を表しています。これによって 1ピクセル=約6m の解像度とはどれくらいか、実感して頂けると思います。(東京シーナリーの航空写真領域での解像度は、約6400フィートより下では1ピクセル=約7mになっています。)



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