フライトシミュレータの邪道な楽しみかた

フライトシミュレータは、当然ながら飛行機の操縦を楽しむ為のソフトですが、ここでは離陸も着陸もしない邪道な?楽しみかたをご紹介します。

「3D CG」

最近は3D CGがはやりです。TVの幼児番組では大分前から3D CGによる音楽番組がありましたが、近年のPCの能力の向上により自分で3D CGを作成することもかなり簡単になっています。(ソフトが高いという難点がありますが。) これらのソフトのほとんどは、2DのCGと同様に、ある領域<三次元の画用紙>を設定し、その領域内に三次元の絵を描いていき、それを時間と共に動かす事もできるというもので、まさに映画・絵画・アニメーションを三次元でコンピュータ上に作成するものです。できあがった作品は、AVI,MPEG,MOVフォーマットのような要するにムービーとして楽しみます。

「VRML」

VRMLもやはりいろいろなところで採用されています。VRMLだけに限らず、いわゆるウォーク・スルー・ソフトのジャンルがあります。 バーチャル・リアリティと言うだけあって、これらにおいては単にムービーを見るだけではなく、ある領域<三次元の画用紙>を設定したあとで、そのバーチャルな世界の中を歩きまわれるようになっています。3D CGのソフトは、このようなバーチャルな三次元世界を作ったあとで、その中のウォーク・スルーの方法を指定してムービーを作るものが多いので、そういう意味では両方のジャンルにまたがるソフトも多いです。ただ概念としては、バーチャルな世界そのものを作品として出力するという意味では上記3D CGとは異なります。

「山岳景観ソフト」

さらに、実際にある山に登り、そこから見える風景をシミュレートする山岳景観ソフトがあります。
この辺になると上記の三次元の画用紙を越えて、<実際の世界>をコンピュータの中に形成します。よくできたソフトでは、実際の地図上で見たい位置を指定すると、その位置での景観を作成して表示してくれます。ただ、現在のところかなり制約があるようで、位置の指定は限られた地点だけだったり、360度のパノラマを生成するものの、速度が遅く、静止画ができるまでに1分くらい待たされるのはあたりまえの状況です。要するに、苦労して山に登った後の頂上での爽快感を再現するジャンルとでも言えましょうか?



「マイクロソフト・フライトシミュレータ」

さて本題のマイクロソフト・フライトシミュレータです。フライトシミュレータには、Slewモードがあり、このモードでは飛行機の操縦をせずに風景をのんびりと眺める事ができます。
これはFSユーザーならごく当たり前の事と感じるでしょうが、実は偉大な事だと思います。上記のソフトとの比較で考えると、まず山岳景観ソフトと同様に実際の世界を形成しています。しかもそれは、山の名前でも何でもなく、緯度・経度・高度の xyz 座標の指定により、大気圏内ならば地球上のどこへでも瞬時にしかも正確に移動できます。更に、ソフト自身が天候や時間変化をシミュレートしており、時間は年月日指定が可能です。ここまでくると限りなくドラえもんの<どこでもドア>に近くなり、要するに<時空間移動マシン>という事ができます。さらに、フレームレートにも依りますが、自分が動いてもそこでの画像の形成にはさほど時間がかからず、移動と共にリアルタイムで画像が見られます。しかも静止画だけでなく、ダイナミック・シーナリーや山手線動画シーナリー花火大会シーナリー長野オリンピックジャンプ団体シーナリーのように動画も表示可能であり、これらは景観ソフトよりはるかに優れています。
このように、概念はとても素晴らしいのですが、実際はいろいろと制約があります。まず、表現能力は、前に述べた3D CGソフトには遠く及びません。まあ相手は限られた画用紙の上にいるだけなのに、こちらは全世界が相手ですから仕方ないのですが。ただ逆に言うと、こんなに遠大なソフトなのに値段は約1万円ですから、考え方によってはとてもコストパフォーマンスのよい優れたソフトといえます。一番困るのは、一度に表示できるオブジェクトの数が制限されており、さらに表示にはヒステリシス効果があることです。数の制限だけならばオブジェクトの簡素化によりある程度は逃げられるのですが、ヒステリシス効果はかなり厄介です。この辺の事情はここにいろいろ書きましたのでご覧ください。

「時空間移動マシン操縦ノウハウ」

マイクロソフト・フライトシミュレータ<時空間移動マシン>を操縦するには(要するに単に Slew モードにすればいいのですが)、ヒステリシス効果をいかに低減させるかがポイントになります。通常の「フライト」の場合、当然空港から離陸して水平に飛行して空港に着陸するのですが、残念ながらこのように移動すると最もヒステリシス効果を受けてしまいます。
ヒステリシス効果を低減するには、オブジェクト近傍での水平移動を行わないことが効果的です。すなわち、まず高々度で下を向き( Shiftキー + テンキーの5キー )ます。そして目的地まで下を見ながら移動し、目的地についてから高度を下げて水平方向を見て、観光を楽しみます。通常飛行するとヒステリシス効果で苦しいシーナリーは、このようにして見ると大丈夫な場合が多いです。(首都高もまさにそうです。)

「もっと邪道な楽しみかた」

見るのが邪道なら、作るのはもっと邪道です。「道路工事して何が面白いのか?」は、時々自分でも考えますが、これは最大の謎です! 道路工事の現状は、メイキング・オブ・首都高速にいろいろ書きましたので、どうぞご覧ください。


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ここまでは、1997-1999年に書いた文章です。

2005.3.27追記

World Wind

あの天下のNASAが、World Windという地球儀ソフトを無料でダウンロードサービスしています。
このソフトは、上記<時空間移動マシン>の概念のうち、空間については相当ものすごいソフトです。マイクロソフト・フライトシミュレータとの長短を簡単に箇条書きすると、まず長所は、 短所は、 ごく簡単に書くとこういう感じでしょうか。しかし、飛行機を操縦しないで世界中に行きたい人にとっては、MSFSの存在意義を根底から覆す可能性を持ったソフトであると思います。フライトシムファンではないその他の大多数の人々の興味をそそるという点では、将来大ビジネスに化ける?可能性もあり、個人が趣味でシーナリーを作る・・・という時代ではないのではと思わせます。GPSのように人工衛星を無料で世界中に公開して使わせているアメリカの国力のものすごさを再認識させるソフトであるとともに、今後の展開にも眼が離せないものと思われます。


具体的に写真つきで少々見てみましょう。

まず高解像度の例から。

これはワシントン・モニュメントですが、斜めから見てみたので高度表現がおかしくなっています。これはTerrainMeshデータだけがあり、3Dオブジェクトがないからです。しかし解像度はすばらしく、自動車が一台一台識別できます。


ホワイトハウスの南側。

これも解像度はすばらしく、車が一台一台わかります。


ホワイトハウス。

3Dオブジェクトがないので、建物が見えません。しかし解像度はすごいです。


日本に来て、東京の、大井埠頭と京浜島界隈。

解像度はぐっと落ちて、この程度です。しかし位置や縮尺は正確です。


レインボーブリッジ。

解像度は低いです。橋のオブジェクトもありません。これだけ見ると全然ダメですが、将来の可能性を秘めている感じはします。


富士山。

遠景から見るとなかなかのものです。TerrainMeshシーナリーだけで勝負している領域のMSFSシーナリーとなら互角ではないでしょうか。


国後島爺爺岳。

ここまで田舎になると、こちらの方が表現力が上ではないでしょうか(ただ、NASAの高度データに段差がありますが・・・)。爺爺岳斜面にある草地と、その上にある植生がない地域の境目がはっきりとわかります。ここにある地図シーナリーとも比較して頂ければと思います。


日本の夜景。

これだけなら良いのですが、解像度が低すぎてこれ以上拡大するとボロボロです。このあたりはまだまだ表現力不足です。


レインボーブリッジその2。

使う衛星を変えてみました。上の写真より色は悪いですが、解像度は少々良いです。このように衛星写真の解像度次第で、将来的には可能性はありと思われます。


渋谷から皇居まで。

中央の下にあるのが六本木ヒルズ、その右下が麻布十番から一の橋です。黒い線が首都高3号線。左端が渋谷駅、右上端が皇居です。やや上方にある黒い線が国道246号です。
左上方に、代々木公園や新宿御苑もわかります。




2005.7.1追記

Google Earth

上記のNASAの World Wind の2番煎じという感がないでもありませんが、これはこれで面白いです。 Google Earth、これも地球儀ソフトで、無料でダウンロードできます。World Wind との比較という観点で簡単に箇条書きすると、まず長所は、 短所は、 まあこんな感じです。しかし、個人的には、東京の昔の風景を細かく味わえるのが一番の長所であると思います。写真を見ながら見て行きましょう。



まずはニューヨークから。

バッテリーパークとグラウンド・ゼロです。3Dのビル付きなので雰囲気出ています(でもテクスチャー無いですが)。これは World Wind では出せない風景です。


自由の女神。

しかし、女神像のオブジェクトは無いので、マンハッタンのビル群を遠くから眺めるのが楽しみというものです。


カピオラニ公園からホノルル方向。

ハワイに飛びまして、オアフ島ワイキキ東部です。このように、ワイキキの西部のホテルしかビルがありません。なので、それより田舎は、真上から見るだけで、傾けて見る楽しみはありません。


日本に来て、東京の、レインボーブリッジとお台場。

なんと、解像度が落ちません!
ここからが、個人的には Google Earth の本領発揮です。


再開発前の六本木六丁目。

これが最高です。写真が古くて六本木ヒルズがまだありません。再開発前の風景が、一軒一軒の家までわかる高解像度で見られます!これは解像度の高さからいっても、写真の古さからいっても、今となっては非常に貴重なものだと思います。

昔の藪下通り(玄碩坂通りなんて呼ぶのは素人。。。)が、はっきりとわかります。


渋谷駅。

しっかり、東急文化会館と、五島プラネタリウムの丸いドームが残っていますね。これもタイムトリップもので、大変貴重です。


町田駅。

いきなりローカルになりますが、JRと小田急の町田駅です。横浜線の改札を出た歩道橋の広場あたりでも、車が1台1台わかる解像度です。郊外の町田なのにこの解像度とはすごいです。

左下はヨドバシカメラでしょうか。


グランベリー・モール。

南町田駅・グランベリーモール・カルフールです。右端が、国道246号と16号の交差点。左端は鶴間公園です。この通り、都心と同じ解像度です。


地名表示Yamato

ちょっと見にくいですが、中央下の Yamato と表示されている場所なのですが、本当は町田市鶴間です。このように場所の表記は大分適当です。中央上部が、町田街道の町谷原です。


富士山。

最後は富士山で終わりましょう。地名表示は、なんと、Huzi san です。「ひゅーじさん。」なんて昼メロの登場人物みたいですが。
あと、富士山の Terrain 解像度も World Wind より粗い印象です。やはり東京近郊エンターテイメントソフトなのでしょう??




2007.1.16追記

Virtual Earth 3D

ずいぶん長い時間がたちましたが、ついにマイクロソフトが、フライトシミュレータではなくて3D地図に参入しました。Google Earthなどは、3Dオブジェクトはほとんど無いものでしたが、これはちゃんと3Dの、テクスチャー付き建造物があります。しかし、当初は日本語Windowsではクラッシュして使えなかったようですが、このインプレスの記事によりますと、現在は使えるようです。とりあえずお知らせまで。



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